常盤橋と日本の文化ーー常盤橋タワーのアートコレクション②
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常盤橋タワーに設置されたアート作品全18点について、ディレクションしたコダマシーン・金澤韻(かなざわこだま)が、5回にわたって解説します。第2回の今回は「常盤橋と日本の文化について」。(冒頭の画像は横山裕一《ふろば》 (2021)(部分))
常盤橋タワーは、かつては江戸城の表玄関だった常盤橋御門があった場所にあり、東京駅日本橋口に隣接しています。国内外から、“日本の文化”、“日本らしさ”を見たい!と自然と期待されるポイントに立っていると言えます。
でもそこで、「これこそが日本の文化、伝統なのです!」と肩肘張って見せるのではなく、軽やかに現在(いま)と、これからのヴィジョンを指し示してみたいと思いました。TOKYO TORCHは未来志向のプロジェクトですから。
横山裕一
漫画家、美術家の横山裕一は、遠い未来、あるいはどこか別の星の様子を思わせる人物と風景の描写で知られます。常盤橋が実は銭湯発祥の地であると知った横山は、今回、銭湯をテーマに8メートルの絵画を制作しました。横山が描き出す公衆浴場には、時代と地域を超えたあらゆる者たちが集っています。こういう異質な者たちが一緒にいる情景こそが、多様性を内包する社会の理想像ではないかと思います。
KIGI
KIGI(渡邉良重・植原亮輔)の手掛けた大きなガラス作品は、回すと複数部位が連動する仕掛けの玩具、 “江戸独楽“がテーマ。彼らが過去に発表した体験型アートプロジェクト「酔独楽」の流れを汲んで、どこか土着のテイストを感じさせます。シャープで粋なリズムを作り出す幾何学的意匠の中に、皿回し芸人や大蛇、盃のモチーフがあしらわれ、昼と夜を通して賑わいを見せる常盤橋の雰囲気が表されています。
品川亮
雲肌麻紙に金箔、岩絵具。雲の形と、大胆に配置された椿の花。品川の作品は、琳派を思わせるような、伝統的な障壁画のスタイルを踏襲しながら、一部抽象的な形を入れて、デザイン的な要素を強く打ち出しています。白い花が一筆書きのようになっていて、まるでスプレーペイントで描かれるグラフィティのようにも見え、スタイリッシュな味わいを感じるのではないでしょうか。
鈴木啓太/PRODUCT DESIGN CENTER
彼らが今回手掛けるのは、漆技能士とコラボレーションした、漆と銀箔の壁掛け作品です。モチーフとなっているのは常盤橋建設と同時期に建設された江戸城の石垣。江戸城の石垣には実に多くの刻印があり、石垣全体が多くの異なる人々により作られたことがわかるそうです。また石垣に苔が生えるように、漆と共に銀箔の模様も、時間をかけて変化していきます。表情の変わっていく作品はとても珍しく、時代の変遷を見つめた常盤橋という場所を象徴しているようです。
NEW LIGHT POTTERY
奈良に拠点を置くNew Light Pottery は、今回、常盤橋タワー、8階壁面の棚のため、ガラスによる照明の組み作品を制作しました。色のバリエーションは、江戸時代から明治時代にかけて盛んになった浮世絵の色を参照しています。一つのユニットを一つの色で作るのではなく、ガラスを重ねて、複雑な色の変化を導き出しました。ガラス職人が丁寧に作った吹きガラスの美しい光のゆらぎと共に、懐かしさと現代性が同居する作品をどうぞゆっくりご覧ください。
*印…オフィスエリアとなります。一般の方はご入場いただけませんのであらかじめご了承ください。
このコラムでは全5回にわたって、常盤橋タワーのアートコレクションについて書いていきます。